最近でこそ見られなくなりましたが、2000年代は日本でレースを走った経験のある日本調教馬が数頭韓国へ輸出され、現地の競走に出走するケースがありました。
そんな馬の中で、最も活躍したのが今回紹介するダイワアラジです。日本の未勝利馬が韓国でグランプリに出走するまでになった経緯を紹介します。

ダイワアラジとは
ダイワアラジは1999年4月5日、静内町(現・新ひだか町)の千代田牧場で生産されました。父はアラジ、母はアークロイヤル、母父はヴァイスリージェントという血統。
父のアラジは1991年にブリーダーズカップジュベナイルを含むG1・4勝を挙げ、2歳でカルティエ賞年度代表馬に選出される快挙を成し遂げました。一方で種牡馬としては2001年大井記念優勝、2000年帝王賞2着のドラールアラビアンが目立つ程度で、期待ほどの成績は残せませんでした(母父としては2006年のドバイワールドカップを制したエレクトロキューショニストを輩出)。
母父のヴァイスリージェントは血統マニアなら説明不要でしょうが、日本でもフレンチデピュティなどが成功し、一大父系を築いています。
どこにでもいる未勝利馬
そんなダイワアラジは2002年1月27日にデビューを迎え、新馬戦で4番人気の支持を集めますが、終始後方に置かれ13着に大敗。その後も中央で6戦しますが、最高着順は9着と箸にも棒にもかからない悲惨な成績で、秋の福島の未勝利戦(当時は11月の福島開催まで3歳未勝利が組まれていた)までを戦い終えました。
こうなった馬の末路は大体決まったようなものですが、一計を案じた馬主は、ダイワアラジを韓国に送りこみます(詳しくは「大和商事」で検索)。ここから、日本で「競走馬失格」の烙印を押されたダイワアラジの逆襲劇が始まります。
新天地で花開く
半年のブランクを経て、ダイワアラジは2003年5月3日にソウル競馬場で韓国デビューを迎えます。初戦こそ6着に敗れますが、その後8戦3勝、3着1回の好成績を収め、半年でクラス1に昇級。中団~後方待機から鋭い末脚を活かす競馬でオープンクラスに上り詰めます。
クラス1では4戦して苦戦が続きますが、2004年4月に行われたG3・馬主協会長杯(現・ソウル馬主協会長杯、2004年当時は2000m)が大きなターニングポイントとなりました。
最低人気での激走
近4走で10・7・9・5着と苦戦が続いていたダイワアラジは、重賞ではさすがに厳しいと見られ10頭中10番人気(123.6倍)。しかし、レースではこれまでの戦法とは違い逃げ馬を見る形で2番手追走を選びます。一旦4コーナーで馬群に吸収されかけますが、直線に入るとしぶとく粘り、前を行く馬をゴール手前でかわし先頭に。押し切りかと思われたところで大外を追い込んできた勝ち馬に差し切られましたが、G3初挑戦、それも最低人気で堂々の2着に入り、その実力を示しました。
日本産馬のエース
この激走をきっかけに、ダイワアラジはソウルのクラス1で安定した成績を収めます。
2004年(5歳)は馬主協会長杯後6戦2勝・2着2回・3着1回の好成績を収め、年末のグランプリでも3番人気に推されて3着。トップクラスとして大きな存在感を示しました。
翌2005年(6歳)もグランプリまで14戦して全て掲示板内、5勝・2着4回・3着2回と抜群の安定感で期待に応えました。この頃になるとレースでは常に3番人気以内、相手関係によっては1倍台の支持を集めることもあり、完全に最強クラスの1頭として認識されるようになりました。
2006年(7歳)も勢いは衰えず、年始から5戦4勝の好成績で6月のソウル馬主協会長杯へ。1番人気に支持されましたが、後方待機策が裏目に出て前を行く馬をとらえきれず、3着に終わりました。
現役晩年~引退後
この2006年のソウル馬主協会長杯が、実質重賞勝利の最後のチャンスだったのかもしれません。
直後のクラス1を4着、4着と敗れた後、ダイワアラジは緩やかに成績を下降していきます。
秋の韓国馬事会長杯は7着、3年連続の出走となった年末のグランプリは8着。翌2007年(8歳)こそソウル馬主協会長杯で3着(8番人気)と健闘しますが、これを最後に平場のクラス1でも入着がままならなくなります。
2008年(9歳)は11戦して3着1回が最高、翌2009年(10歳)も現役を続行しますが4戦してすべて着外。4月26日のクラス1で12頭立ての最下位に敗れたのを最後に、長い現役生活に別れを告げました。
引退後は種牡馬となりますが、産駒を2頭しか残せず。2019年に死亡していることが確認されました。
通算成績は75戦14勝(日本:7戦0勝、韓国:68戦14勝)。
日本【0・0・0・7】
韓国【14・10・9・35】
ソウル馬主協会長杯は4年連続で出走し2・5・3・3着と無類の堅実さを誇りました。
2010年には、韓国・KBSでドキュメンタリー番組が制作され、当時の関係者の話と、余生を送るダイワアラジの姿が紹介されています。
以上、異国の地でその才能を開花させることに成功した1頭の馬・ダイワアラジについてご紹介しました。


ダイワアラジ全成績


コメント